経済学を学ぶ上で、理論と実証の2つの観点を持つことが大切である。なぜなら、経済学は実証科学であるからである。そして、実証には経済データが必須である。そこで、以下ではその経済データの利用法の概略を紹介する。(なお、本稿は「データの活用法」(共著)、『超・入門経済学(『経済セミナー』増刊)』、日本評論社、1995年, 1996年のリバイス版である )
どのマクロ経済理論のテキスト(中谷(2000)他)でも最初に出てくるのが、国内総生産(GDP)の三面等価の原則である。この理論的説明はどのテキストにもあるが、そもそも「国内」総生産のデータはどのような刊行物で公表されており、またいくら程なのだろうか?その答えは、内閣府経済社会総合研究所『国民経済計算年報』であり、2002年度の実質GDPは約537兆円(1995年基準)である。
さて、ここで説明したGDP統計は、経済データの中で最も基本的なものである。GDP統計を手始めに以下では経済データを分野別に紹介していく。その前にまずデータ利用に関して留意すべき点を指摘しておこう。
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データを統計資料より採取する場合に、気をつけるべき点が多くある。なぜなら統計データは降って沸いてくるものではなく、一定の手続きのもとで作られたものであるからである。したがって統計資料の巻頭や巻末にある解説を読み、データの概念や含意、作成方法等を正確に把握する必要がある。下手をすると、データの含意を十分理解しないために誤った無意味な利用をしてしまいかねない。具体例をあげてみよう。たとえば、「政府」の概念は、集計機関による違いがある。分析における問題意識に沿うデータを用いず、むやみにデータを用いることがナンセンスな分析につながりかねないことがよくわかる例である。以下では、参考までにデータ採取時に注意すべき点を表1に整理した。
なお実際のデータ採取に当たっては、最新データを用いるのが鉄則である。為替レートや金利の様にすぐに数値の確定するものならば問題ないが、GDPなどの過去数年のデータが毎年調整(リバイズ)される場合には注意を要する。また、統計資料によっては長期遡及がされておらず、以前の版の統計資料などを用いる必要が出てくる場合が往々にしてある。この様な場合、データ接続を慎重に行う必要がある。特に、基準年の変わる実質値や指数の場合には注意を必要とする。さらにデータはなるべく一次資料(データが最初に公表される統計資料)から採取するのが望ましいことは言うまでもない。なお、最近は長期時系列データがインターネット経由で入手しやすくなったため、確認してみることを勧める。
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以下では、分野別に採取出来るデータについて紹介する。なお、詳細は表2を参照されたい。
A.国内総生産
一国の経済活動の規模を知りたいとき、マクロ的経済指標としてGDPおよびGDPのコンポーネント(構成要素)のデータを用いる。
B.家計
家計に関するデータは様々あるが、例えば国際的に見て極めて高いと言われ、経常収支黒字の原因(参考:蓑谷研究会(1995))ともされる家計貯蓄率があげられる。この他にも消費者物価指数や家計調査などのデータがある。
C.労働
いわゆる「産業の空洞化」も労働問題と密接に関わる問題である(蓑谷研究会(1996))。労働に関するデータとは、就業・失業、労働時間、賃金などに関わるデータである。具体的には失業率、有効求人倍率、総実労働時間などが挙げられる。
D.財政
財政に関する統計とは、政府の経済行為を記述したものである。歳出・歳入の規模やその構成などの大別された統計は日本銀行調査統計局『金融経済統計月報』等の総合的な経済統計資料に掲載されている。統計書ではないが財政に関する統計資料が豊富にまとめられている書籍としては、西村(1993)や林・今井・金沢(2001)が挙げられる。財政関係統計の極めて重要な利用上の注意点として、@日本やアメリカ等の財政関係の年次統計はその殆どが暦年データではなく年度データであること(欧州諸国は暦年データである)、A 国際比較の際には政治・財政制度の違いに充分注意を払う必要があること、の2点が指摘される。
海外の財政関連のデータについては各国独自の統計書(アメリカではBudget of the United States 等)も利用可能だが、IMF(International Monetary Fund) が刊行しているGovernment Finance Statistics Yearbook が利用しやすい。
E.金融
マクロ経済学における経済政策の手段としては大きく@金融政策、A財政政策の2種類がある。この「金融政策」に関わる経済指標、具体的にはマネーサプライや各種金利のデータなどが金融データの代表例である。なお日々の金融関連のデータに関しては、『日本経済新聞』や『東洋経済統計月報』東洋経済新報社が有用である。
F.産業構造
マクロ経済学においては、産業間での連結関係は無視されて、あたかも一つの国が一つの経済主体であるかのようにみなして考えを進めていく。しかし、だれもが知っている通り、現代の諸産業は、相互に取引関係を結びながら生産活動を営み、複雑な相互依存関係を持っている。自動車産業を例にとって考えてみる。自動車の需要が増えた場合には、自動車の生産は増えるが、その際関連産業である鉄鋼業や、機械工業、ゴム製品工業などの需要も拡大する(これを需要の波及効果と呼ぶ。)。このような他産業への波及効果は、自動車から鉄鋼業へ、鉄鋼業から鉄鉱石を運ぶ運輸業へ、という様な連鎖関係を持っているが、この効果はマクロ経済学では考慮されない。この波及効果を定量的に測るために産業連関表(参考:中村他(1992))が用いられる。
G.国際取引関連
一国が諸外国と行う様々な取引を把握するには国際収支統計を用いる。この国際収支統計は1996年より統計作成方法が変更された(詳細は日本銀行国際収支統計研究会(2000)参照)。
H.国際比較
データを国際比較し、相対的判断を下すことは有効である。だが国際比較を行う場合、データを各国の統計から採るのには膨大な労力がかかる。そこで便利なのが、各国際機関(OECDやIMF)の統計資料である。なお国際比較の場合、海外の統計資料を使うことが頻繁にあるので、経済用語に英語で慣れると便利である。
I.アメリカ
各国統計の利用に際してはいくつか留意すべき点がある。ここでは特に頻繁に用いることの多い米国の場合について触れる。
第一に指標によって日本の対応する指標と名称が異なるものがある。例えばマネーサプライ統計は米国ではマネーストック統計と呼称されている。また、我が国の企業物価指数は、米国の生産者物価指数と対応する。
第二に経済指標の作成機関の相違が挙げられる。我が国の統計作成機関は多岐にわたるが、米国の場合主に商務省、労働省、連邦準備制度理事会(FRB)の三機関である。例えば労働省は労働関連指標以外に物価統計をも担っている。作成機関を把握することは当該データの関連情報を得るためだけでなく、より厳密なデータ理解のために重要である。
第三に社会制度の相違が挙げられる。最も大きな差異は会計年度の差異である。米国の場合は10月から9月までの1年間であり、指標によっては同一時点での統計比較が不可能な場合もある。また、失業者、マネーサプライ等の定義が異なるなど、経済現象に対する認識の違いの存在にも注意が必要である。
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表1 データ利用に関してここに気をつけよう
フローデータかストックデータか? |
フローとは、「ある一定期間の経済活動の成果、すなわち経済組織の中を『流れる』量」を意味する。一方ストックとは、「一定の時点で現存する量、すなわち過去からのフローの『蓄積』量」を意味する。GDPは言うまでもなく「フローデータ」である。なぜなら、GDPとは「一定期間に生み出されたフローの財・サービスの付加価値の合計」と定義されるからである。ストックデータにはマネーサプライ等がある。 |
時系列データか、横断面データか? |
データの観測される地域を固定し、時間(時期)を追っていくデータを時系列データ、逆にデータの観測される時間(時期)を固定した、場所別のデータを横断面データという。「『日本』における1970年以降のGDP」は「時系列データ」である。 |
データのタイプは何か? |
データには、集計された期間により暦年・(会計)年度・四半期・月次・日次などの区分がある(ストックデータの場合は、「暦年末」などと「末」という言葉を添えることで、「末」時点の蓄積量であることを示す)。暦年データは国際比較の際に有用であり、国内データのみを用いる場合には年度データがよく用いられる。また四半期・月次などの場合は期間を細かく分けて分析が可能になることは言うまでもないが、「季節性」が問題となる。例えば消費に関して考えると、ボーナス期で消費の伸びる12月と消費の冷え込む2月を同等に比較することはナンセンスである。したがって、(2月を含む)第1四半期と(12月を含む)第4四半期を単純に比較することも同様にナンセンスである。このような季節性を除去する手法としてX−11法(エックス=イレブン)がよく利用されてきたが、最近はX−11法のバージョンアップ版であるX−12法(詳細は木村(1995)もしくは日本銀行調査統計局(1996)参照)という手法が日本銀行を中心に使いはじめられている。なお、現データの対前年同期(月)比をとれば、(広義の)季節調整が出来る。 |
C実質値か名目値か? |
名目値とは、そのデータの集計された時点における時価で評価された値である。つまり、ある年に10,000円の現金を稼げば名目の稼ぎ(=時価で評価した稼ぎ)は10,000円である。しかし、翌年にも10,000円の現金を稼いだからといって、その実際の価値は同じであろうか?もし、物価がその1年で20倍になっていたとしよう。つまり、去年は消しゴム1個が50円だったのに、翌年には1,000(50×20)円になってしまうということである。この場合、ある年は200個の消しゴムが買えたのに、翌年には10個しか買えないことになる。これでは、同じ「10,000円」でもその実質的な価値には大きな差がある。そこである基準時点の価格で評価されたデータを「実質値」という。 |
データの単位 |
データ単位が揃っていないと、分析結果は全く無意味なものになってしまう。例えば、経常収支などを考察する際には、円単位か、ドル単位か、対GDP比(%)なのかで全く違う。とくに複数の(統計資料の)データを同時に利用する際に注意を要されたい。
また指数、実質値を比較する際には、基準時の違いにも注意を払う必要がある。なお指数とは、ある変数の特定の時点(もしくは場所など)における数値を基準とし、一般的に100とおき、比較する数値を基準値に対する比率で示したものである。その作成法としては、ラスパイレス法とパーシェ法が代表的である。前者では、基準時において各品目の購入が全購入額においてどれほどのウェイト(割合)を占めるかを決め、加重平均を取る。そして、このウェイトを固定し、比較時の価格で購入した場合と基準時の場合のコストを比較する。代表例は物価指数である。後者は、比較時のウェイトで、基準時価格によって購入した場合と比較時のそれを比較する。後者の方が構造変化、行動変化などを加味しているという点で優れているとされるが、速報性に欠ける。GDPデフレータも結果的にこのパーシェ指数である。いずれも一般的に、5年毎に基準年を変え、過去の指数と接続する。指数に関しての詳細は白塚(1998)を参照されたい。また、両者の違いを活かした分析として山崎(1991)や蓑谷研究会(1995)が挙げられる。 |
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表2 分野別の統計資料について
A.国内総生産
【統計資料名】『国民経済計算年報』 【作成機関】内閣府経済社会総合研究所
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GDPは1国で一定期間に産み出されたフロ−の財・サ−ビスの付加価値の合計と定義される。そしてGDPの内訳こそが民間消費、政府支出といった経済のマクロ変数である。分配面から見たGDPの内訳としては、雇用者所得、間接税、営業余剰等があり、支出面から見たGDPの内訳としては、民間最終消費支出、政府最終消費支出、国内総固定資本形成等があり、生産面から見たGDPの内訳としては各産業別GDP等がある。これらの動きが、「日本ではどの項目、分野の動きが不安定なのか」とか「景気循環は存在するのか、それはどれくらいの規模なのか」といった問題を解決する手がかりとなる。いわば、本資料は1国の家計簿ともいえる最重要統計資料である。
本資料では暦年、年度、四半期のデータについて、10億円単位で実質値と名目値を公表しており、四半期データの季節調整値も載っている。本資料は、マクロ分析に幅広く用いられ、GDPの構成要素のグラフ表示、消費関数・投資関数の推定等に利用される。
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B.家計
【統計資料名】『国民経済計算年報』 【作成機関】内閣府経済社会総合研究所
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主要系列分類の一つに家計があり、所得・耐久、非耐久財別消費支出・貯蓄等の家計行動を把握出来る。なお(可処分所得−最終消費支出)として定義された貯蓄額より貯蓄率を求める事が出来る。
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【統計資料名】『家計調査年報』 【作成機関】総務省統計局
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一般世帯・勤労者世帯家計の実態を捉えた月次標本調査であり、月平均値が公表される。家計消費支出はGDPの60%程を占める重要指標であるが、都市別・品目別分類の大きな誤差、多くの記入漏れの存在等限界があることに注意が必要である。本資料では(可処分所得−最終消費支出)を黒字としており、黒字率は勤労者世帯の貯蓄率に相当する。
近年貯蓄率は減少、黒字率は上昇傾向にある。これは個人営業世帯・自由業者・無職者の貯蓄行動に影響によるものである。なお貯蓄率を国際比較する場合、OECDのNational Accountsを用いると便利である。
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【統計資料名】『消費者物価指数年報』 【作成機関】総務省統計局
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消費財・サービス価格変動、消費生活への影響を捉える資料。消費者物価指数は、家計データを実質化するデフレータとしてしばしば用いられる。なお、ラスパイレス法で作られている。
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C.労働
【統計資料名】『労働力調査報告』 【作成機関】総務省統計局
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雇用把握の代表的資料。速報・月報・年報にて全国10地域別の月次・四半期平均・暦年平均・年度平均を公表。特定期間内の就業状態を捉えた標本調査。また2、8月には労働力調査特別調査が行われ、毎月調査と異なる詳細について報告されるが、83年以前は別月調査であり、データ不連続や年毎に内容が異なる場合があることに要注意である。
失業率は正式には「完全失業率」と言い、景気悪化時に上昇し、好転時に減少するのが一般的である。だが、就業者以上の労働力人口増加により失業率は上昇するため、景気動向との関係を見る場合には注意が必要となる。失業率の国際比較には、各国で失業率の定義に多少の差違があるので、OECDのLabor Force Statisticsに掲載されている「標準化失業率」を用いるとよい。
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【統計資料名】『毎月勤労統計調査』 【作成機関】厚生労働省統計情報部雇用統計課
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賃金・労働時間・雇用指数把握の代表的労働資料。常用労働者5人以上事業所を対象とした全国・地方調査および4人以下の零細事業所を対象とした特別調査が、標本調査(注意:標本調査では公表する全体推計結果に誤差が生じている点、標本規模変化に伴う不連続性等に注意)で毎月行われる。なお現金給与総額の推移には女子増加等の労働者構成変化が影響を与えており、単純に産業間比較は出来ないことに留意すべきである。
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【統計資料名】『就業構造基本調査報告』 【作成機関】総務省統計局
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最新版は平成14年版。就業状態を細かく把握出来る資料。平常の就業状態を捉えた「有業者方式」による、原則5年毎の標本調査である。詳細な就業状態、就業への意識、1年間における労働移動を全国・地域別、産業別につかむことが出来る。
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【統計資料名】『職業安定業務月報』【作成機関】厚生労働省職業安定局雇用政策課
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景気動向指標である有効求人倍率、新規求人数等、労働市場の需給を示す資料であり、毎月発表される。
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D.財政
【統計資料名】『財政統計』 【作成機関】財務省主計局
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この統計資料には、一般・特別会計の歳出入から、財政投融資や国債、地方財政に至るまで、財政に関する主要な統計資料が掲載されており、長期時系列データが掲載されている項目が多いことも利用上便利である。また、巻頭に数10ページにわたる解説(財政制度、国民経済と財政、一般会計予算の分類、財政投融資)が掲載されており、参考になる。
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【統計資料名】『財政金融統計月報』 【作成機関】財務総合政策研究所
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最新の統計やより詳細な統計を必要とするときは本資料を利用するとよい。財政に関する特集号としては、「国有財産特集」、「租税特集」、「予算特集」、「財政投融資特集」、「国庫収支特集」がある。
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E.金融
【統計資料名】『金融経済統計月報』 【作成機関】日本銀行調査統計局
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金融のみならず、幅広い分野のデータが掲載されているが、本書では主要金利、各金融機関の勘定、およびマネーサプライなどの金融に関わる主要データが掲載されている。
まず、マネーサプライ (通貨供給量)統計は日本銀行による金融政策の動向を見る指標の1つである。マネーサプライと実体経済の関係は経済学上の重要な論点である。なお、マネーサプライは様々な種類に分類されているが、一般にM2+CDが利用される。また、各市場(債券、株式、外為市場)別の主要金利(例えば、コールレート)なども掲載されている。
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【統計資料名】『証券業報』 【作成機関】日本証券業協会
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債券市場(公社債市場)の金利、発行額、償還額、現存額、本邦企業の国内外の資金調達状況など、債券市場関連の詳細なデータを入手するのに便利である。
公社債とは、公共債(国債、地方債など)と社債(金融債、普通事業債など)を指す。また、債券市場は発行市場と流通市場(既に発行された債券の流通する市場)に分類される。
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【統計資料名】『東証統計月報』 【作成機関】東京証券取引所
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株式市場に関するデータを入手するのに必須な統計資料である。株価、株式売買高・売買代金などが掲載されている。
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F.産業構造
【統計資料名】『産業連関表』 【作成機関】総務省統計局
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略してIO表と呼ばれる。1年間の取引量を表わすフローデータだが、推計が膨大な量に及ぶため本格的には、5年毎に基本表(現在は1995年表が最新)が作成され、それを元に中間の年次を補完するために延長表が推計される。他にも投入係数表、逆行列表、雇用表、付加価値誘発係数表など、多くの付帯表がある。
付帯表を用いれば幅広い分析が可能である。例えば、産業・貿易・地域構造の問題を始め、軍縮、経済発展、更には公害、医療問題にも応用されており、理論面の応用も進んでいる。
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G.国際取引関連
【統計資料名】『国際収支統計月報』 【作成機関】日本銀行国際局
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国際取引は、経常取引(財、サービス、所得、経常移転)、資本取引(投資収益、資本移転)、外貨準備増減の3種から構成され、これらを複式簿記の原則に従い記録した資料である。新聞などで話題になる経常収支や直接投資額は、この統計書に掲載されている。この資料の注意点は、@1996年より統計の作成方法が改訂されたので、これまでの統計との違いに留意する必要があること、A国際収支統計の直接投資は実績ベースであり、大蔵省の作成した届出ベースの統計とは異なること、の2点である。また、より細かく調べるときには財務総合政策研究所『財政金融統計月報』の「国際収支特集」を、国際比較の際にはIMFのBalance of Payments Statistics Yearbookを用いるとよい。
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H.国際比較
【統計資料名】International Financial Statistics Yearbook (IFS) 【作成機関】IMF
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国連とその関係機関(UN, IMF,UNCTAD他)は国連に所属する国の様々な統計資料(一部和訳有り)を公表している。その数は膨大なため全てを取り上げることは出来ない。だが、その中でも頻繁に用いるのが本書である。長期遡及がなされているため非常に使いやすい。また、World Tables(個々のデータについて時系列データを各国比較で掲載)と、Country Tables(国別で主要データを掲載)の2編に分かれていることも特徴である。全分野について一通りのデータが掲載されている。だが、データの含意の説明は不十分であり、注意を要する。
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【統計資料名】『海外経済データ』 【作成機関】内閣府
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アジアのデータが豊富で便利。
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I.アメリカ
【統計資料名】Survey of Current Business 【作成機関】BEA
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米国の国民所得統計はNIPAと呼ばれる独自の体系に沿って集計されており、我が国の新SNA体系と異なる。掲載内容はGDP(名目、実質、変化率)、GDPデフレータ、個人消費支出(名目、実質、更に耐久財、非耐久財、サービスに分類)、国内民間投資支出(名目、実質、固定投資と在庫投資に分類)、国際収支(原計数、季調済計数)等、豊富な内容のため最も重要である。しかし、毎月掲載内容が異なるなど非常に使いにくい資料でもある。
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【統計資料名】Monthly Labor Review 【作成機関】米国労働省
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雇用、賃金に関する統計が掲載されている。代表的な指標である失業率(サンプルセンサス、原計数、季調済計数)は「軍人を除くベース」、「軍人を含むベース」の二種類があり、注意を要する。また、年齢階層、性別の他に人種毎の計数も発表されており、我が国とは異なった社会事情がうかがえる。
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刈屋武昭他(1985)『計量経済分析の基礎と応用』東洋経済新報社
木村武(1995)「季節調整の方法とその評価について」日本銀行金融研究所『金融研究』第14巻第4号
慶應義塾大学経済学部蓑谷研究会(1995)『雇用と経常収支の問題』多賀出版
慶應義塾大学経済学部蓑谷研究会(1996)『産業の空洞化』多賀出版
白塚重典(1998)『物価の経済分析』東京大学出版会
中谷巌(2000)『入門マクロ経済学』第4版、日本評論社
中村隆英他(1992)『経済統計入門』第2版、東京大学出版会
西村紀三郎(1993)『統計から見る財政学』学文社
日本銀行経済統計研究会編(1993)『経済指標の見方、使い方』東洋経済新報社
日本銀行国際収支統計研究会(2000)『入門 国際収支―統計の見方・使い方と実践的活用法』東洋経済新報社
日本銀行国際統計研究会(1993)『海外経済指標の読み方 新版』東洋経済新報社
日本銀行調査統計局(1996)「季節調整法について」日本銀行『日本銀行月報』1996年5月号
林健久・今井勝人・金沢史男(2001)『日本財政要覧』第5版、東京大学出版会
森博美他編(1998)『統計ガイドブック 社会・経済』第2版、大月書店
蓑谷千凰彦・平田英明・斎藤崇・大津泰介 (1997)『パソコンを用いた数量分析』多賀出版
山崎俊雄(1991)「わが国経常収支構造とその中期展望」『東銀月報』第43巻第5号、東京銀行調査部
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