日本地理学会2000年度秋季大会                                2000.10.7〜10  

河川流域の水環境データベースに関する地理学的研究
−吉野川の事例−
A geographical study on the water environmental database in River Basin
A Case of the Yoshino River

小寺浩二(法政大・文)、渡辺修宏(法政大・地域環境科学研究会)、
松浦祐樹(法政大・院・工)、大八木英夫(法政大・学)
Koji  KODERANobuhiro  WATANABE ,  Yuki MATSUURA , Hideo OYAGI Hosei  Univ.)

キーワード:水環境、データベース、地理学的視点、吉野川流域、地下水
KeywordsWater environment , Database , Geographical viewpoint , Yoshino River  Basin, Groundwater

T  はじめに

「水環境」を研究するにあたっては、「地理学分野」に限らず、水文・水質・水資源などに関するデータベースの構築が必要である。また、最近、分野・学会を越えて「水」のデータベースに関する議論が活発にされるようになった。そうした中で、日本地理学会「水環境」の地理学研究グループ主要テーマの一つ「GISを用いた水環境研究」分野でも、データベースの問題が繰り返し取り上げられてきた。
 特に、小寺ほか(2000)は、山中ほか(2000)などの提言を受けて、土木学会水理委員会(1985)や、UNESCO(1995)の作成したデータベースの事例をあげて、地理学的な視点に立った「多くのデータベースのプラットホーム」となるような「大河川流域データベース」のフォーマットに関する議論の必要性を訴えて、2000年度秋季学術大会における事例提示を呼びかけた。
 本研究では、吉野川流域を取り上げ、大河川流域データベース構築への問題点について報告する。

U  吉野川の事例について 

吉野川は、流域面積3750q2 (17)、幹線流路長 194km13位)の河川で、四国においては、最も大きな河川である。中央構造線を挟み、内帯・外帯それぞれの特徴を持った支流が分布し、上流域にはダムも多く、四国の最も重要な水資源供給地域として開発も進み、最近では下流域のいわゆる「第十堰問題」が話題となっている。
 本研究では、下流域に焦点を当て、「第十堰問題」に関しての地下水調査結果を基にしたデータベースについて、地理学的視点から検討を加えた。

V データベースについて

  主要なデータは、「流域全体に関する基礎資料」、「建設省より入手した観測データ」、「現地観測データ」の3つに大別できる。

1.              流域データ

まず、国土地理院による50万分の1地方図・20万分の1地勢図・5万分の1地形図を基に流域図・水系網図を作成し、それら3つのスケールの流域図を基図として、様々なスケールの地質図や、流域データの重ね合わせを行った。
 その際には、紙地図上での手作業の後、スキャナーを用いてデジタルデータ化を行い、数値地図などのデジタルデータも用いて、流域特性をわかりやすく表現することを試みた。

2.              建設省データ

 雨量・流量・河川水位・地下水位のデータが中心である。まずデータリストを作成し、流域全体のスケールでのデータと下流域のデータに大別した。その上で、特に下流域データを中心に、詳細なデータベースを作成し、検索システムの形式と、データ解析事例提示の方法について検討を加えた。 

3.              観測データ

19992月からはじめた不圧地下水観測データを整理し、一部のデータについて、公開可能なデータベースへの形式変更を行った上で問題点について整理した。データを用いた解析結果の一部については、提示方法を検討した。
 以上3種類のデータ整理にあたっては、一般的な表計算や画像処理ソフトと同時に、GISソフトを用いるようにし、問題点などを抽出する努力をした。具体的には、インフォマティクス社の「SIS」を使用し、提示にはマイクロソフト社のPower Point とHTML形式のブラウザ表現とを比較した。

W  おわりに

 吉野川の事例においては、あえて下流域を中心としたが、地下水位などのデータが膨大で、大河川の流域データベースというよりも、「下流域地下水データベース」といった性質のものとなった。やはり、大流域としての共通のフォーマットの構築がまず先決であると思われる。
 

 

土木学会水理委員会(1985) 全国試験流域調査表,242p.
UNESCO(1995)
Catalogue of rivers for   Southeast ASIA and the Pacific Vol.1, 291p.
宝 馨(1998):日本における水文情報データベースの展望―海外の動向に基づ
  く考察―. 文・水資源学会1998年度研究発表会要旨,84-85.
山中 勤・小野寺真一(2000):山地流域水文データベースの構築−現状と問題点−.
  日本地理学会「水環境の地理学研究グループ」20003月研究集会資料.
小寺浩二ほか(2000):「水環境」の地理学と河川流域データベース. 日本地理学会 「水環境の地理学研究グループ」第4回研究集会資料.

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