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Risu Report < NO.5 > 2003
/ 02 /07 水環境と疾病レポート5:住血吸虫
(Schistosomiasis) Risu(形式修正:Amazon122) 今回の報告は、水質改善にターゲットを当てた疾病対策プログラムが最も多く行われている住血吸虫を取り上げてみた。 人体に寄生する主な住血吸虫は3種類あり、それぞれSchistosoma
haematobium, Schistosoma mansoni, Schistosoma japonicumである。他にSchistosoma
mekongi等、種も存在するが、これら3種と比較すると公衆衛生的観点から考慮してもあまり問題ではない。S.haematobium
(写真1)
による住血吸虫症はアフリカ、西アジアの一億人に見られる。ほぼ全ての住民が幼少期に寄生虫に感染し、一部の部族では血尿が少年から青年に至る生理現象と考えられている。研究の一環として尿の検査をしに行った際、あまりの血尿患者の多さに通常の尿であった子供が自分が異常だと思って心配したという話があるくらいである。
写真1(文献Aより引用) S.mansoniの流行域は広範囲に及んでおり、世界全体でおよそ6000人程度であると考えられる。S.japonocumは中国、台湾、日本と韓国に生息する。日本ではS.japonocumの治療および中間宿主であるカタツムリの撲滅対策が成功を帰し、国内での新しい症例は報告されていないが、他の水系疾病同様、海外旅行者の増加に伴う輸入症例は毎年何件か報告されている現状である。
写真2(文献Aより引用) 写真3(文献Aより引用) 患者を見てみると職業上では漁師、灌漑労働者、農民等水と接する時間が長い職人が多く、女性は水汲み、洗濯をする際に感染することが多いため全般的に男性よりも女性の感染率が高い。また、先にも述べたように子供は日中長時間にわたって水遊びをするため大人より感染の危険が多い。(写真2、3)さらに、公衆衛生の発展していない地域ではしばしば屎尿処理が整っておらず、これが病気の流行の原因ともなる。しかしながら、ときには貯水池や水力発電用ダムが貝の棲息域を増大させることがある。灌漑事業によって通常の40倍以上に伝染率が上がった報告もあり、前回報告したジアルジア症同様、開発事業による逆被害も存在する。 感染はcercariaという形態 (写真4)
のSchistosoma種が皮膚に侵入することによって起こり、侵入した部位に皮膚炎がみられる。感染から1ヶ月前後に下痢、その後倦怠感、食欲不振、発熱などの症状が発症し、S.mansoni,
S.japonicumでは肝臓の肥大化が、S.haematobiumでは血尿見られた後に膀胱炎が見られるようになる。
写真4(文献Aより引用) 住血吸虫症の撲滅プログラムは広域にわたって行われているが、特に大がかりなものはエジプトとフィリピンで行われている。エジプトでは国家の保健事業のおよそ8%が住血吸虫症のプログラムに投資されている。以下に各国の水質改善による撲滅プログラムの表をまとめる。
一口に化学療法薬剤、中間宿主殺虫剤による対策、といっても同一国内でも地域によっての特性が大きく違うため、一つ一つの場所に対してそれぞれ別個の撲滅対策方法を立てなければならないため、予想以上の時間と人材、資金が必要となってくる。しかしながら汚染されている水源が上に添付した写真だけからもわかるように地域住民にとっては風呂、洗濯、食事、という衣食住全てに関わってくる場所のため、このような水源の改善は必要不可欠であろう。 〈参考リンク・文献〉 ・
文献 A) Schistosomiasis-Tropical Medicine: Science
and Practice, edited by: Adel AF Mahmoud, series editors: Geoffrey Pasvol and
Stephen L Hoffman, Imperial College Press, 2001.
B) Parasitic diseases in water recources development - The need for intersectional negotiation, J. M. Hunter, L. Rey, K.Y. Chu, E.O. Adelolu-John, K.E. Mott, WHO Geneva, 1993
文献A ・リンク<日本語> http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/mzool.dir/index-2.html ・リンク<英語> http://www.who.int/ctd/schisto/index.html
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