<第5回「イギリスと環境」研究PJミーティング>                               2003/02/1

       庭園から見た日本・イギリス・環境

                                                                S u g i

 
1.日本庭園
 日本庭園といえば、お寺の庭から坪庭まで、幅広くある。庭園様式や大きさをみればそれぞれ違うのだが、どの庭をとっても洗練された技術とセンスによって造りだされている。それらの庭は、細心の注意と心配りによってに自然な風合いを保っている。限られた空間で日本の四季を十分に堪能させてくれる。
 しかし、現在の庭は、どうだろう。私たちのイメージする日本庭園の良さは残されているだろうか。日本庭園というブランドを着飾りすぎているのではないだろうか。日本庭園というだけで、見る側も、見られる側も考えることを止めてしまっている。つまり、「日本庭園と名のつく庭で、しかもこんなにお金まで出しているんだからいい庭に決まっている」とか、「庭園特集の本と同じようにしたからいいだろう」というふうに。それでは、創作するという作業の中で考えるという最も肝心なことが欠落してしまっている。こんな事では、日本庭園の創作どころか、管理すら危ぶまれる。京都も含めてそれは、日本にある庭園すべてにいえる事だと思う。
 多くの庭師達が、真剣に歴史や文化について考えれば考えるほど、大きな勘違いから抜け出せなくなってしまっているのではないだろうか。京都の庭師という立場の中で、私の目には日本庭園がそう映った。
 
2.イギリス庭園
 イギリスの庭というとすぐに風景式庭園を思い浮かべるが、それは必ずしも古代からの伝統ではない。変化し始めたのは、一八世紀初頭からで、それは造園家よりも詩人や思想家が先導した一種の文化革命であった。彼らは人工性を退け、多様性や不規則性を、そして自然を賞賛した。そして、その流れが、現代も根強く残っているのである。日本と違いイギリスでは、大きな街路樹が何本も育っている。その大木は、街の歴史や風景に一層の深みを与え私達をいつも魅了し続けている。しかし街の家々を見ながらを歩いていると、またここでも日本と同じような現象がおきている事に気付いた。いつまでも歴史の産物にぶら下がっていては何の発展性もないが、流行りに惑わされすぎてもいけない。 
 
3.ガーデニングを通して日本を見る
 今日の日本人にとってガーデニングとは、イギリスを感じるのにもっとも身近な物ではないだろうか。ガーデニングブームもすっかり落ち着き、日本の家の庭のあり方として定着しつつあるが、本家本元では、やはりまだまだこだわりがありそうだ。目に見えて違うのは、庭が広いということ。そして、花の組み合わせ方の基本がしっかりしているということ。具体的には、色鮮やかな花の種類を大中小と数多く揃えられる事で様々な構成が楽しめるのだ。長い年月をかけて作られた基盤は想像以上に大きい。そして、日本と大きく違うように感じたことは、庭を共有する気持ちがあるということ。これはとても重要なことだと思う。
 ただ今回、街をゆっくり歩いて、全ての家が綺麗に管理されているというわけではなく、花が咲き乱れているわけではない(今回は冬場なので言いきれない。想像できる限りだが)ことに気づいた。日本と同じように多くの庭がガレージに変わっている。普段のこちらの様子、生活習慣は様々なメディアを通じて知ることが可能だが、やはり実際にこちらで生活してみないとわからない事のほうが多い。特にそれを強く感じたのはイギリス人が、冬に庭を見ようなんて思わないということである。だから、庭なんて寒々としたもので、わずかでも太陽の存在を感じさせる芝生の緑が唯一の救いとなっている。厳しい冬を越すイギリスの人達が華やかなガーデニングを愛する理由が少しわかったような気がする。
                                      
4.まとめ
 今回のイギリスとの比較で、気候、文化による感覚の違いはあっても自然環境に対する意識は両国ともあまり変わらないのではないかということを感じた。それは、発達した庭文化を誇りに思っているという反面、個々の環境問題に対する認識の薄さもどこか共通しているからだ。他のヨーロッパの国々ではすでにゴミの分別回収が徹底しているが、ロンドンではそこまでのように思わなかった。私の住む京都市でも、まだまだいい加減なものだ。地方にいけば、かなり分別回収には注意している。京都は日本でもゴミ意識の低い都市だろう。理由は何であれ庭を自慢している場合ではない。見せかけだけではすまされない問題がすでに地球規模で始まっているのだから。これからも庭こだわり,かかわり続けながら環境問題について更に考えていきたい。