☆=コミック ★=小説、評論
山本直樹 『ありがとう』
山本おさむ 『どんぐりの家』
柳美里 『ゴールドラッシュ』
田島昭宇×大塚英志 『多重人格探偵サイコ』
紡木たく 『ホットロード』
藤子不二雄A 『少年時代』
かわぐちかいじ 『Medusa』
田口ランディ 『もう消費すら快楽じゃない彼女へ』
石坂啓 『俺になりたい男』
藤竹暁編 『現代人の居場所』
村上龍 『希望の国のエクソダス』
大平健 『純愛時代』
松本大洋 『GOGOモンスター』
☆ かわぐちかいじ 『Medusa』 小学館文庫 |
『沈黙の艦隊』については語る気がしないのだが、こちらは最近、文庫版になっていて、つい買ってみたら、結構面白くて、ハマってしまった。文庫の方は、現時点で、3巻まで出ている。 ラブ・ストーリーと言っていまえば、確かにその通りなんだけど、なんと言っても社会背景の描き方のスケールがデカイ。さすがに、この作者の構想力ってすごいと思う。いきなり1960年代末の大学紛争が舞台で、それから過激派の析出過程に移り、低成長時代への移行と、日本の政治の腐敗局面に突入して、さらには、ベルリンの壁が壊れて、日本企業の海外進出や国際テロ組織の問題にまで逢着する。 こういった長いタイム・スパン、言ってみれば、戦後日本社会の曲がり角以降の壮大な「同時代史」を、一方では学園紛争の当事者から過激派、国際テロ組織へと生き渡っていく陽子と、学生時代から一貫して保守政治家をめざし、その道に邁進する龍男とが、お互いに交錯し、すれ違いながら、「同時代人」として生きていく様が描かれている。 そういう意味では、これは、ラブ・ストーリーであると同時に、ふたつの対極的な道を進む男女のビルドゥングス・ロマン(教養小説=青年の自己形成物語)としても読める「仕掛け」になっているのだ。ビルドゥングス・ロマンとしては、少なくともゲーテの『ウィルヘルム・マイスター』なんかよりも、よっぽど面白い。なんて言うと、僕自身の「教養」のなさが露呈してしまうのだが、でも今の若い人にはお薦め。 ちなみに、登場人物や組織などの名前は、さすがに固有名詞としては変えてあるが、どの人物にしても、会社名にしても、政治家にしても、事件にしても、すべて実在のものを彷彿とさせるように出来ていて、そういう興味からも面白く読める。 |
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