気軽なノリで本を紹介します



「お薦めの本」のページの更新が、なかなか進みません。
紹介したい本はあるのだけど、ついつい筆が重くて・・・。まとまった時間が取れない生活にもなってきたし。
だったら、ということで、もっと気軽に書けるページを作りました。
もともとは、掲示板のスレッドに本の紹介を書き始めたのに「暗示」を受けました。これをまとめりゃあ、いいじゃないか、と。
だから、文章表現的には、相当におちゃらけています。でも、内容は大まじめです、もちろん。
かなり、僕個人の読書記録的な感じになるかもしれませんね。  (2003.02.18) 





太田政男編
 『最新青少年事情サミングアップ』

 
(教育開発研究所 \2300)

 僕も書いてます。原稿料、わりと良かったです(^o^)

 タイトルだけでも笑えるこの本は、実は、上の出版社が企画した「管理職スペシャル・レクチャー」シリーズの第6巻。おまけに、サブタイトルには「最新の青少年文化と行動パターンを概説」とあり、さらに、「ここが知りたい青少年の最新の実態」と続く。

 と、書くと、たぶん興味をそぐと思うけど、でもねえ結構、いいライターが並んでいるんだよ。この手の本にありがちな構成にもなってないし。「最近の若者は・・」ふうのお説教は少ないし。
 まっ、気が向いたら、手にとってみて下さいな。

 
和田秀樹 『自己愛と依存の心理学』
 (PHP新書)

 何となく読み始めたけど、いやあー、わかりやすよ。「コフート心理学入門」というサブタイトルは、嘘じゃない。精神分析系に関心がある方は、ぜひどうぞ。

 渡部真 『ユースカルチャーの現在』
 (医学書院)

 入門的な本を読みたい向きには、いいかもしれない。ただ、雑誌に連載した文章がもとなだけに、個々のテーマへの掘り下げは、あと一歩かなあ?(失礼ながら)

 大学教員と学生の対話という形式だから、読みやすいのは間違いないです。あと、著者は教育社会学の人だけど、構築主義的な視点が結構、色濃いかもしれない。

小杉礼子編『自由の代償/フリーター』
(日本労働研究機構)

 フリーター問題について、この間、精力的な調査と研究を進めてきた、日本労働研究機構の研究チームによる最新作。これまでも報告書等がいくつも出ているが、これが決定版かな。良く出来てると思います。
 視点に偏りがないし、実証データも豊富だし。今後は、この手の研究論文が書かれる際には、必ずリファーされる文献になると思う。

堀尾輝久・浦野東洋一編
『東京都の教員管理の研究』 (同時代社)

 教育改革というのは、実は国の専売特許ではなくて、現在では、さまざまな地域・自治体での取り組みが始まっている。
 そのなかの、かなり過激バーションというか、激しい管理統制路線を内に含みつつ展開しているのが、東京都の教育改革というヤツ。東京での動きを、教員管理に焦点づけつつ、追跡し分析しているが、学校の外にいる人間が読めば、結構ビックリするかもしれない。


重松清『エイジ』 (朝日文庫)

 話題になった時期より遅れたけど、通勤の行き帰りの電車の中で読了。
 僕の好きな作家の一人です。ちなみに同年齢です(確か)。子どもの世界を描かせるとすごいし、実は、僕個人は、初期の頃の彼が描いていた、40歳前後の夫婦を中心とした、ニュータウンでの家族生活の情景というのが、超リアルかつイマジネーション刺激的(^^;で、スゴイと思ってるんだけど。

 この作品じたいは、明らかに神戸での事件を念頭において、14歳の日常と心象風景を書こうとしたもの。よく書けてるって歓心するけど、ただ、個人的な趣味で言うと、この作家は、長編よりも、短編のほうが、もしかしたら味があるような気もする。

東ちづる(長谷川博一)
『<私>はなぜカウンセリングを受けたのか』
(マガジンハウス)

  いやあー、こんな一般向けの本で、カウンセリングのケーススタディが記録されるとはね。専門家向けの研究誌や専門書なら、わかるけどさ。
 東ちづる、って若い人は知らないかもしれないけど、女優、というかタレント。本業のほかに、ボランティア活動などでも知られている。
その彼女が、自らがACであることを自覚し、母親との「葛藤」をはじめ、ついには母と娘がカウンセリングを受けることになった。その記録が本書というわけ。
 長谷川博一は、そのカウンセリングを担当したカウンセラー。実は、この人も子ども関係の本を出していて、なかなかの人なんだけどね。
 (僕的には、こちらの名前を見て、この本を買う気になったぐらいで(^^;)
 やっぱ面白いよ。生身の人間が滲みでてきて。それとカウンセリングに興味のある人には絶対おすすめ。どんな入門書よりも、よくできた入門書にもなるんじゃないだろうか。(もちろん、理論とか技法の話は出てこないけど)


滝川一廣(聞き手・佐藤幹夫)
『「こころ」はだれが壊すのか』
(洋泉社新書)


 「精神医学化する社会」とか、通常の「児童虐待」の捉え方への異論とか、かなり面白い視点が出ていると思う。
 滝川一廣という人は、精神科医なんだけど、すごく社会的視点のある人で、前から注目してたんだけど。(不登校についての分析など)
ただ、この本の場合、インタビュー形式というのはどうだったかのかなあ? 聞き手がしゃべり過ぎてるし、普通に書いてくれた方がわかりやすい、ってところもあるような気がした。

安達智則ほか『どんな東京をつくるか』
(萌文社、2003年3月20日刊、¥2000)

 思いきり宣伝ですが(^^;

 僕も「第2章 教育を変える 東京を変える」
を書いてます。サブタイトルに「手をのばせばとどく、ほんとうに住みたい東京」。
 石原知事への批判は、ちまたにいろいろあるけれど、じゃあ、どうそればよいの? という対案がなければ、そしてそういう対案を実現していくための筋道をリアルにイメージすることができなければ、そうした批判も宙に浮いてしまう。

 だから、その点を徹底的に、けれども誰にでもわかるやさしい文章で書こうとしたのが、本書。
 労働、教育、福祉、交通、財政が各章のテーマ。僕も、これだけ多様な、他領域の人たちと仕事をしたのは初めての経験でした。

金城一紀『GO』
(講談社文庫)

 文庫になってんのを発見したので、即購入。
 みんな知ってると思うけど、「在日」という固有の、重たいテーマについて、どこかにありそうなセッティングから、どこかにありそうなエンディングへと向かっていく小説。
 なんだけど、ただ、一つだけありそうでないのは、独特のポップな筆致。って言えばいいのかなあ?一気に読んでしまった。

福岡県立城南高校編
『生徒主体の進路学習』

(学事出版)

 城南高校は、おそらく、日本の高校のなかで今、もっとも注目されている学校の一つ。
 「ドリカムプラン」として知られるキャリア・エデュケーションの展開が、その誕生の経緯から進化のプロセスまで、ていねいに跡づけられている。
 いわゆる進学校の実践記録なんて、今まではほとんどなかったし、結構興味深く読めた。学校の組織論というか、運営論としても、実は重要な示唆があるような気もする。
 ただし、ホントにこれだけでいいのかなあ、という苦い感触は残るんだな。生徒たちが自分のやりたいことを探す、進路を見つめるということが、どういう意味で、社会や他者とつながっているのか、こういうところがもっと知りたいと思った。

 

香山リカ+福田和也
『「愛国」問答』 
中公新書ラクレ

 例の「ぶちナショナリズム」論の続編かと思って、期待して買ったんだけど。まあ、読めたのは、香山による序文だけだった。
 あとは、放談だよ、こりぁー!
 こんな安直な本づくりで、いいんだろうか?(ビジネスとしてはあり、あんだろうな。俺みたいに騙されて買うヤツもいるから。)


西原博史『学校が「愛国心」を教えるとき』
日本評論社

 時機を得たタイミングで好著が刊行された。
 副題に「基本的人権からみた国旗・国歌と教育基本法改正」とある。基本的人権を「思想・良心の自由」というふうに、より具体的に表現すれば、ほぼこの本のエッセンスが表現されるだろう。

 著者は、法学(憲法学)の研究者で、国歌・国旗法の頃から、精力的に発言を続けてきた。学校関係者にも大きな影響を与え、運動や裁判等にも関与してきている。

 教育基本法の「改正」が、具体的な政治日程にのぼり、「国を愛する心情」がそこに盛り込まれることが予定されている今だからこそ、問題を原理的次元からラディカルに考えることと、「改正」の教育現場への帰結を冷静に考えてみることの、両方が必要なのだと思う。
小熊英二・上野陽子
『<癒し>のナショナリズム』
慶応義塾大学出版会

 これは、いい本だった!
 副題に「草の根保守運動の実証研究」とあるけど、対象とされているのは、「新しい歴史教科書をつくる会」の神奈川支部の有志団体。そこのエスのグラフィーを中心にして(上野の卒業論文)、前後に小熊の論考が収められている。

 「つくる会」と言えば、すぐそのオピニオン・リーダーたちの言説(や離合集散劇)に注目が集まるけど、本書が問題にしているのは、その草の根レベルでの実態。そして、そういう動きを生みだし社会基盤。

 勉強になりました。m(_ _)m

宮台真司『援交から天皇へ』朝日文庫

 少し前に出てたけど、読んでなくて、文庫化されたのに気づいたので、読破。宮台の書いたものは、以前なら、即チェックして読んでたけど、最近は、実は遠ざかってた。久しぶりに手にしてみたけど、まあ面白かったよ。

 本のつくりは、彼が書いた他の人の本の「解説」を寄せ集めて、そこにオリジナルの著者からの返信も載せるという仕組みで、まあ手抜き(^^; と言えば、手抜きだと思うけど。
 でも、この人は「解説」書くの、うまいかも。原著者に近づきすぎす、離れすぎず。原著を多少は紹介しつつ、紹介しすぎず。スタンスの取り方が、やっぱさすがという感じがする。
取り上げられている領域も、サブカルチャー論から国家論にまで及んでいて、すごく広いし。


勢古浩爾『わたしを認めよ!』洋泉社新書

 なんとなく小浜逸郎を彷彿とさせる論者だった。大学の教員とか研究者というよりは、思想家という感じの人。著書紹介によれば、洋書輸入会社勤務とある。

 とまれ、書いている中味は、結構イケてると思う。人間にとっての「承認」欲求をきちんと見据えているというか。僕の関係で言えば、「アイデンティティ形成論」の参考文献としては、実はもっとも読みやすくて、もっとも本質的かもしれないと思った。


  
荷宮和子『若者はなぜ怒らなくなったのか』
中央公論新社
  

 タイトルに惹かれて、購入したけど・・
 ちょっと期待はずれだったような(^^; 著者は、僕と同じ年の生まれ。特有の世代感覚をベースに置きながら、「最近の若いもん」=団塊ジュニア世代と、その親に当たる団塊の世代をコテンパンに批判している。

 これだけ斬りまくれば、きっと気分いいだろうな、著者は! だけど、読む側にはどうだろうか?



鷲田清一『じぶん・この不思議な存在』
講談社現代新書

 この本、刊行されたのは、結構前です。1996年。本屋さんの本棚で、手にとって、買おうかなと思ったことが何度もあるんだけど、結局、ずっと買わないできた。そういうことって、ない?

 無意識的に避けていたのかもしれないけど、でもついに先日、誘惑に負けて? 買ってしまった。
 ははっ、買ってしまえば何てことはない! いい本だと思う。いろいろ考えさせられて。さすがに哲学者やねえ、って思う。つづめてしまえば(そんなことしちゃ、いけないような気もするけど)「反アイデンティティ」という視点からのアイデンティティ論かな?

 うーん、もっと早くに読んでおけば良かった(^^)


神野直彦『人間回復の経済学』
岩波新書

 しごく真っ当な本だと思う。読んでいて、清々しいというかな。近頃流行りの新自由主義(新古典派経済学)をこてんぱんに批判して、「経済のための人間」ではなくて、「人間のための経済」を主張している。当然、日本における「構造改革」路線のインチキさ、浅はかさ、行き詰まりを破滅へと追い込む勘違いさ加減も、容赦なく斬られている。

 もちろん、批判だけではなくて、オルタナティブの提示もある。スウェーデンの事例は、僕自身も素人なだけに確かに参考になった。
 ただ、ねえー。それはそれで、もちろんよく理解できるんだけど、こういう正論を前にして、なんか空々しさというか、虚しさというかを感じてしまわないわけではないのは、なんでなんだろ?
 きっと、このあたりに、現在の日本社会を考える際の決定的に重要なポイントがあるような気がするのだが・・


東浩紀『動物化するポストモダン』
講談社現代新書

 いやー、凄いわ。うまく紹介できないけど、これだけの内容を、ここまでわかりやすく(と言っても、ある程度の「現代思想」なるものへののレディネスは要るのだろうけど)書けるなんて、尊敬の一語に尽きる。

 「オタクから見た日本社会」が副題。キャラ萌え、ってなんだと思う人が読んでみていいちゃうやろか。
 それにしても、データベースという言葉は、こういう分析概念になるなんて、考えてもみなかった!



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