■ 北海道へ夏のゼミ合宿 (文責:鈴木武 2002年12月)

 9月11日(水)から9月14日(土)まで、北海道に行きました。参加者は18名。初日、10時に羽田空港集合、1時半に新千歳空港に着きました。レンタカーを借り、小樽に向ったが、途中、札幌郊外にある有名ラーメン店「純連」で腹ごしらえ。小樽に着いたのは6時を過ぎていました。

(写真:羽田空港  新千歳空港  ラーメン純連
 先生としては、ゼミ生に街の配置の様子を学んでほしいと思って、これが日銀小樽支店、あれが旧三菱銀行などと説明していたのですが、ゼミ生の関心事はカニを食べることでした。寿司屋通りをぶらぶらしていると、ゼミ生がある店の前で立ち止まって動きません。おっさんがダミ声で、「よいタラバと悪いタラバの見分け方を知ってるか!」と声高に話しかけています。「わー、大きい!」 水槽のタラバをみて女子学生が叫びました。「ここまで大きいタラバはそうはいないよ」と、おっさんは得意顔です。親切に水槽からタラバを取り出してみせると、女子学生がそれを取り囲み、先生がデジタルカメラでパチリ。「よし、ゼミ生にこれを食べさせてあげよう」 先生もフンパツ。おっさんが紹介してくれた近所の寿司屋にタラバを運んでもらい、ゼミ生は大満足でした。先生は最後に残ったタラバの脚を食べてみました。水槽の臭いがして水っぽく、なるほど長生きしたタラバだと納得しました。
(写真:小樽築港駅  小樽カニ屋  小樽寿司屋
 札幌の全日空ホテルに着いたのは、夜10時半。それから薄野に見学ツアーをしました。新宿通りとか、なるべく危ない地域をみて回りました。女性では来られないだろうと思ったからです。もっとも、女性ならポンビキに声を掛けられる心配はないかもしれません。
 翌12日、快晴。札幌時計台をみて、大通公園を歩き、道庁、北大を見学して、洞爺湖温泉に向かいました。万華閣という豪華な温泉付きホテルです。ゼミ旅行で、こんな贅沢していいのかな? 食事をすませて部屋に戻ると、すぐ近くの湖水で花火が上がっていました。夏の終わりの感傷的な気分を誘うものでした。もっとも、青春を謳歌している学生ならばこれでいいのですが、先生には単なる涼しい秋の始まりというところでした。さて、そのあとは地下のバーで大人の時間、ゼミ生みんなでグラスをかたむけた次第です。
(写真:札幌大通公園  北海道庁  北大クラーク像  洞爺湖万華閣
 13日、曇。近くの昭和新山に行きました。赤茶けた岩肌、落ち着いたとはいえ、まだ続く噴煙、なるほど生きた山です。ゼミ生は、しつらえた階段で写真撮影をすませると、持参した柔なバットとボールで戯れていました。資料館にはいると、畑だったところから大地が盛り上がって山となっていく生々しい様子の写真が掲示されていました。学生も、せめて、これくらいの知識に関心を示すと見込みがあるのですが。
 昭和新山を後にして、噴火湾の海岸に沿って函館に向かいました。えんえん長い距離です。途中、長万部で昼食、なんの変哲もない森町を見学(これは先生だけが興味を持っていた街です)、曽田牧場で馬と撮影、大沼公園でゼミ生はボール投げ、先生はきちんと国立公園のすばらしさを満喫、函館のロイヤルホテルに着きました。
(写真:昭和新山  曽田牧場  大沼公園
 「いくら丼が喰いたい」「ウニ丼が食べたい」 学生の関心はいつも食と性に向いています♂♀ 先生があらかじめネットで調べてきた「がき大将」という居酒屋に行きました。五稜郭の近くにある店です。さばいたばかりのイカの脚が未練がましく動いていて、それを突きながら、身はおいしく食べました。あとで、脚は香ばしい唐揚げになって、お色直しです。ゼミ生はなんやかんやと注文し、食卓は皿がわんさか。そこへ期待のウニ丼、いくら丼。新鮮! おいしい! ゼミ生は食い散らかし腹一杯。先生は、食べ残しできない世代。でも、とてもでないが、食べ切れない。
 腹が一杯になったらボーリングだという。学生は思いつくまま、好き勝手。たっぷりやって、夜中の1時。先生の予定では、函館山から夜景を見る手はずでした。とにかく山へ。授業ではうつろな眼をしているゼミ生も、夜になると、どこまでもいく。頂上に着く。寒い! 半袖姿の先生は後悔した。階段を上って展望台へ。眼下に函館の街の光が地形一杯に輝いていた。想像以上に美しい。光の切れた両サイドは海か。イカ釣り船かもしれない光が数個、闇に点灯していた。
 夜はまだこれだけでは終わらない。ホテルに戻ると、前ゼミ長・4年生・赤池君の誕生日祝いだという。この企画は、赤池君には内緒。ケーキはすでに用意してあり、ロウソクも20本くらい立っていた。4年生女子・三浦さんの部屋がパーティ会場。三浦さんが赤池君に色気で迫るという設定で、他のものは皆、襖の陰で息をひそめて待機していた。赤池君が来た。三浦さんが低い声で迫り、愛の告白。赤池君が入り口から後ずさりしている様子が、音だけからもはっきり分かる。赤池君がシャイなのか。役者が下手なのか。クライマックスもないまま、種明かし。ケーキを食べたら、夜中の3時。先生はさっさと部屋に帰って消灯。あとは学生がテキトーにやってくれ。
(写真:函館がき大将  函館山夜景  函館ロイヤルホテル
 14日、晴。最終日である。ゼミ生は朝食をしっかり食べたのか? 10時半過ぎ、ホテルを出発。3時間くらい、市内を歩いて見てまわる予定。指示したとたん、えーっとゼミ生がうんざりした声をあげた。いつものゼミの時間の反応だ。先生が先頭をさっさと歩く。ゼミ生がかなり後ろから、だらだらついてくる。形を変えているが、これもゼミの時間と同じ反応だ。函館駅前の朝市を見る。赤レンガの金森倉庫を見る。昼時だけれど、ゼミ生の腹は空いていない。これでは、まるで普段の学生のリズムではないか。函館山中腹の教会をめざして坂を上った。チャペルの前で全員写真に納まると、学生の忍耐もここまで。もうだれも歩くとは言わない。坂を下り、レンタカーに迎えに来てもらい、五稜郭に向かった。
(写真:函館金森倉庫  函館ハリストス正教会
 五稜郭前まで車で来るのは無謀だった。一方通行で道が折れて、車が動かない。運転手を残して城内へ入った。五稜郭は戊辰戦争の最後の戦場である。明治2年に幕府方の榎本武揚がここで抵抗した。城郭は焼け、いまは星形の堀と城壁が残っている。この城壁の上をゆっくり一周して、当時に思いをはせるのが、ここでの観光だ。ゼミ生は城内にはいるとすぐに広場で柔なバットでボールを打ち出した。だれひとり五稜郭に関心を示すゼミ生はいなかった。小学生か中学生だったら、もう少し歴史に興味を持っただろうに。中学校の社会科の教師になればよかったか。
 遅い昼食をし、函館空港に向かった。空港で土産も買った。北海道のありきたりの土産であったが、これで満足。とにかく、全員何事もなく帰れて、先生としてはよかった。