調査の概要:誰に、何を聞いたのか?
対象は、関東の私立大学で「キャリアデザイン入門」という授業を履修している大学1年生1,830名。調査では、高校時代に経験したキャリア教育(13項目)と、大学入学後のキャリア意識(CAVT)について尋ねました。
高校時代に印象に残っていたキャリア教育とは?
「高校で記憶に残っているキャリア教育は?」という質問に対して、最も多かったのは以下の3つです。
これらは、2010年の国の調査(労働政策研究・研修機構)とほぼ同じ結果。つまり、この10年でキャリア教育の"定番"はあまり変わっていない といえそうです。
キャリア意識を測る「CAVT」って何?
キャリア意識は「キャリア・アクション・ビジョン・テスト(CAVT)」で測定。以下の2つの力に分けて評価されます。
人に会ったり、様々な活動に参加したりすることを示す
将来に向けた夢や目標、やりたいことなどをいかに明確にしているかを示す
高校のキャリア教育は大学生のキャリア意識に影響しているのか?
高校時代に経験したキャリア教育それぞれに基づいて「経験あり群」と「経験なし群」に分類し、アクション得点とビジョン得点の平均の違いを確認しました。
その結果、概して、多くのキャリア教育について経験ありと回答した者の方が経験なしと回答した者よりもアクション得点とビジョン得点が高いという結果が確認されました。
研究結果のポイント
おおよそ、高校でキャリア教育を経験した学生の方が、大学でもキャリア意識が高い という結果がでました。特に、アクション得点においては、多くの項目で「経験あり」グループの得点が有意に高い傾向がありました。
アクション得点が高かったキャリア教育は?
大学入学後の"アクション"と関連が深かったのは、以下のような実践的な学びです。
- 職場体験学習・インターンシップ
- 履歴書の書き方や面接練習
- 就職活動の進め方や試験対策の授業
高校でこれらの経験があると、大学でも積極的に行動する力が育まれている可能性があると考えられます。
アクションもビジョンも高めていたのは?
「コミュニケーションやマナーを学ぶ授業」は、アクション・ビジョンの両方に効果が見られました。内面の育成や対人スキルが、将来像の明確化と行動の原動力につながっているのかもしれません。
高校で「大学でやること」を先取りしてもいいの?
注目されたのは次の3つの項目。
- 履歴書の書き方や面接練習
- 就職活動の進め方や試験対策
- コミュニケーションやマナーの授業
これらは国の分類(労働政策研究・研修機構, 2010)では本来"大学で扱う内容"とされています。しかし今回の調査では、高校で経験した学生は全体の2〜3割程度。つまり、ほとんどの学生は大学に入ってから初めて学ぶというのが現実です。
この研究(田澤・梅崎, 2023)では、上記の3項目が大学入学後のキャリア意識を高める可能性を示唆したことは認めています。しかし、高校時代までに未経験の者でもその後、大学で経験できる可能性が高いため、単純にこれらを高校時代までに経験させるように促すことは妥当とは限らないと考察しています。
たとえば、こんな学生もいるかもしれません。高校時代、クラスメイトの多くが卒業後すぐに働く進路を選んでいて、自分も「就職するってこういうことなんだな」とある程度イメージは持っていた。けれど、いざ大学を卒業して働く自分の姿となると、ピンと来ていない。
高校のときは"高校卒業後の就職"を前提にしたキャリア教育を一緒に受けてきたけれど、「大学卒業後の働き方」まではイメージできないまま今に至っている──そんなギャップがある人も、実は少なくないのかもしれません。
出典
田澤実・梅崎修(2023)「高校時代のキャリア教育の経験と大学新入生のキャリア意識―持続性の観点から―」『生涯学習とキャリアデザイン』第20巻第2号, pp.83–96