調査の概要:誰に、何を、どうやって聞いたのか?
調査対象は、法政大学で2022年度に「キャリアデザイン入門」を受講した学生たち。
CAVT(キャリア・アクション・ビジョン・テスト)は、以下の2つの力を測定するものです。
- アクション得点:インターンやイベント参加など、行動力に関する指標
- ビジョン得点:将来の夢や目標の明確さを示す指標
なお、調査では途中で回答をやめた学生の影響を統計的に補正するため、「脱落ウェイト」という手法を用いて、より正確な効果測定を行っています。
授業を受けたことで、キャリア意識はどう変化したのか?
まず、全体として以下のような変化が見られました。
将来の見通しが向上
行動力が向上
研究結果のポイント
つまり、将来の見通しも、行動力も、平均的に上昇していたことがわかります。
でも、すべての学生に同じ効果があったわけではない?
今回の調査では、学生の属性ごとに効果の出方に違いがあることも明らかになりました。
女性は"ビジョンの伸び"がやや大きい
ビジョン得点の伸び幅は、女性のほうがやや大きい傾向が見られました。
初期値では男性の方が高かったものの、女性は「働くこと」への将来像が描きにくい傾向があるため、授業によってその見通しが開けていく可能性があります。
20歳以上の学生は、就活を意識していた?
年齢別に見ると、20歳以上の学生はビジョン・アクションともにスコアが高め。
就職活動が近づく時期にあることで、授業の内容をよりリアルに受け止めていたことが影響しているのかもしれません。
スポーツ推薦で入学した学生は"高いけど、変化は小さい"
スポーツ推薦で入学した学生は、授業前からビジョン・アクションともにスコアが高め。
しかし、授業によるスコアの伸びは小さめでした。
すでに"スポーツを軸としたキャリアの見通し"が明確になっているからこそ、変化が出にくかった可能性があります。
第二志望の学生が、いちばん伸びた
志望度別にみると、法政大学を「第二志望」として入学した学生の伸びが最も大きい結果となりました。特にアクション得点では、18.52 → 20.52(+2.00)と大きく向上しています。
「自分はここで何をするべきか」と前向きに考える姿勢が、授業によって刺激されていたのかもしれません。
一方で、「第三志望以下」で入学した学生は、ビジョン得点の伸びがほとんど見られませんでした。
学部による違いはあったのか?
学部別にみると、明確な一貫性はないものの、以下のような傾向が確認されました。
- キャリアデザイン学部や経済学部は、初期スコアはそれほど高くなかったものの、受講後の伸び率が特に大きかった
- 経営学部は、スコアの伸びが比較的小さい
- 文学部や社会学部なども一定の効果が見られる
得点の「水準」だけではなく、「どれだけ伸びたか(変化率)」にも注目する必要があると指摘されています。
キャリア教育は「誰に届くか」が大切
この研究からわかるのは、「キャリア教育の効果は一律ではない」ということ。
- 将来の見通しが描けていない学生には、大きな効果がある
- 一方で、すでに明確な進路がある学生には、変化が出にくい
つまり、キャリア教育は「何を教えるか」だけでなく、「どのような学生に、どのようにアプローチするか」が問われる教育でもあるのです。
この研究の限界と今後の課題
今回は法政大学の1つの科目のみを対象としており、他大学や他科目での効果は不明
受講を選択した学生のみが対象のため、そもそもキャリア意識の高い学生が多い可能性
長期的な効果(就職活動や卒業後への影響)は今回の調査では測定されていない
出典
瀬戸健太郎・田澤実・梅崎修・武石恵美子・坂爪洋美(2023)「キャリアセンターが提供するキャリア教育科目の効果測定―CAVTを用いた検討―」『生涯学習とキャリアデザイン』第20巻第2号, pp.69–81