日本地理学会2001年度春季大会

「水」を素材とした環境教育に関する地理学的研究
−雲仙島原「水と住民のシンポジウム」での活動を中心に−
A geographical study on environmental education in a hydrological framework
−An example of the symposium on water and residents in Shimabara city−

大八木英夫・小寺浩二 (法政大)
Hideo OYAGI, Koji KODERA(Hosei Univ.)

キーワード:水環境、地理学的手法、環境教育、島原
Keywords:Water environment , Geographical method , Environmental education , Shimabara City

T はじめに
 日本地理学会「水環境の地理学」研究グループでは、主要テーマの一つとして、「水を素材とした環境教育」に関する研究を進めてきた。過去の研究集会では、すでに高校・大学を中心に5件の事例発表が行われたが、2000年秋の研究集会において、素材を持ち寄ってポスターによる議論を行おうという企画が持ち上がった。
 その流れを受けて、演者らは、事例の多い学校教育での題材を避け、地域住民への公教育的事例を対象として選定した。地域の環境に対する住民の意識は全国各地で高まっており、特に「水環境」に関する保全活動や市民活動は多い。しかしながら、ある程度活動が広がってからは、浸透しにくくなる傾向がある。それは、市民運動としての組織だったものが中心となってしまい、真の意味での「環境教育」が実践されなくなることが原因である可能性が高い。
 そこで、本研究では、2000年11月に雲仙普賢岳噴火10周年を記念した「水と住民のシンポジウム」の開催に協力した経験をもとに、「水環境」の継続的な教育システムを構築する上での問題点などについて報告する。

U 雲仙島原の「水と住民のシンポジウム」
 島原市では、雲仙普賢岳噴火10年を記念した事業が催される中で、市の最大の特長である「水」を活かした「水と住民のシンポジウム」が開催された。もともと、復興事業の中で「水環境」に対する住民意識の高まりと地道な活動があり、その上で行政と一体となった準備が進められた。基調講演やパネルディスカッションも行われたが、基本的には、「水と文化」・「湧水と住民」・「白土湖と住民」・「子供達と水環境」という4つの分科会に分かれて、住民主体の議論が重ねられた。特に第4分科会の「子供達と水環境」では、シンポジウム開催日以前に繰り返し会合が持たれ、子供達を対象にしたアンケート調査や、世代を越えた親密な交流が行われた。

V 住民間の活動を通じての環境教育
 こうした活動の中では、教育する側、受ける側という図式は成り立ちにくい。活動への参加を通じて、住民それぞれの環境に対する知識は豊かになり、意識の変化につながる。従って、まず、活動全体が多くの住民に受け入れられることが重要であるが、環境に関する豊富かつ正しい情報なしには成り立たないことも事実である。素材としての「水」は既存のものであっても、有効でわかりやすい活かし方に対しての助言がなければ、環境理解に役立てることは難しい。

W 地理学的手法の活用
 「水」を通じて環境理解を深めるためには、「水循環」や「水収支」をまず理解することが重要であり、地理学の果たす役割は大きい。「水」の分布といった空間情報をわかりやすく認識させる上でも地理学的手法は有効で、GISを用いて「水文環境地図」を作成することなどは効果的である。さらに、結果を集積したデータベースを構築することができれば、公教育・学校教育など、様々な現場で活かせる素材を増加させることができ、今後のこうした研究の発展・展開が期待される。

  図1 島原の水文環境地図の一例

参考文献
駒沢大学地理学科(1999):1998年度駒沢大学地理学調査報告書.74p.
高村弘毅・河野 忠・島野安雄(1999):名水を訪ねて (44)長崎県の名水−島原湧水群−.地下水学会誌、41(1)、pp.140-156.
島野安雄(2000):雲仙火山東麓地域における湧水における湧水の水文化学的研究.宇都宮文星短大紀要,11,pp.3-39.

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