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大学院生へのアドバイス(田中教授)
 
 
法政大学大学院・マーケティングコース修論のための個人的アドバイス

1998年12月(1999年12月改訂) 田中 洋

1. 論文を書くに当たって
論文の書き方の本を是非参照してください。論文を書く技術をこの際に身につけるように御勧めします。例えば、カードを使って論文を作成するやり方です。(これは古典的な「知的生産の方法」(岩波新書)に確か詳しいはずです)心理学関連の論文の書き方として、「心理学 実験・研究レポートの書き方〜学生のための初歩から卒論まで」(フィンドレィ著、細江他訳)、北大路書店があります。本書の最後に訳者によるレポート書き方の文献リストあり。

2. 資料や論文の探し方:
法政の資料室・図書館にない場合、他の大学図書館などに当たる必要が出てきます。(法政の大学図書館で紹介状を書いてくれるはずです)マーケティング・広告関係の図書館として、吉田秀雄記念広告図書館があります。場所は銀座の電通通り、旧電通ビル地下一階:電話:3575-1385、FAX 5568-4528.平日夕方4:30まで開館。
 後とにかく、「マーケティング・ジャーナル」(日本マーケティング協会)、「流通研究」(日本商業学会)、「日経広告研究所報」(日経広告研究所)、「広告科学」(日本広告学会)、「消費者行動研究」(日本消費者行動研究学会)などの研究雑誌を参照してください。ただし以上の中では現在は「マーケティングジャーナル」だけしか経営学部資料室ではおいてないはずです。

3. 研究費用の確保について
よく探すと研究補助を出してくれる財団があります。広告・マーケティング研究関係ですと、吉田秀雄記念事業財団の研究助成では修士課程の大学院生でも最大50万円(!)出してくれます。ちなみに昨年(1997年)の応募は8件で、研究助成したのも8件つまり競争率0%だった。応募の締め切りが間近で毎年、新年の1月初めころ。問い合わせ:3575−1384.FAX 5568-4528。
http://www.ikuei-yoshida.or.jp/yoshida/recruit_99.html ここから応募書類がダウンロードできます。

4. 研究方法について
最終的に「アンケート調査」をやって一応実証の形を整えたい…という方がいますが、これは狭い考え方。実証にも、実験・観察・インタビュー・内容分析、など多様な方法があります。質的な調査でもちゃんとした手順を踏めば、今後はアクセプトされることが多くなると思います。ただし現在は日本語では質的調査法については良い本が出ていません。(参考までに:Qualitative Data Analysis, by Miles and Huberman, Sage, 1994, 内容分析については、「メッセージ分析の技法」クリペンドルフ、けいそう書房)

量的調査でつかう統計については、「市場調査論」などで教えていただけると思いますが、わかりやすいものとして以下の四冊があります。
1.「SPSSによる統計処理の手順」、東京図書。
2.「パソコン楽々統計学」、講談社ブルーバックス。
3.「本当にわかりやすいすごく大切なことが書いてあるごく初歩の統計の本」(すごいタイトルですね)、北大路書房。
4.「はじめての統計学」鳥居泰彦、日本経済新聞。

この他に:
認知心理学の方法を展望した著書として:「認知研究の技法」海保・加藤編著、福村出版。
心理学的アプローチで尺度を作成したい人は:「心理尺度アプローチ」堀・山本・松井編、垣内出版、10,094円。
社会調査一般には:飽戸弘著「社会調査ハンドブック」日本経済新聞。(これは名著ですね)

参照文献リストの書き方や文中の引用の仕方は大事な技術です。これは学問領域により少しずつ違いがあります。どれが良いかは好みにより判断してください。私は面倒が少ないアメリカ心理学会(APA)方式、日本心理学会「執筆・投稿の手びき」を多く使っています。これらは文章中には例えば、「田中(1998)はこう示唆している」と表示して、引用文献で、

田中 洋 1998 企業戦略におけるブランド管理の地位 マーケティング・ジャーナル、69、4−14.

というようにまとめて文献を示すものです。これはいちいち脚注をしなくてもいいので楽ちんです。どんな方式を使うかはその人の好き勝手ですが、大事なことは論文の中で一貫して同じやり方で通すことです。

(以上)