三鷹の街

「三鷹の街」

　三鷹駅の南口をでた。高架改札口からでると、そのままの高さで駅前広場まで張り出ていて、その下は薄暗いバスターミナルのようなものになっている。最近は、たいていの駅でそうなっている。三鷹駅も例外ではない。ただし、南口は駅前広場といえるほどの広さもなく、いきなり目の前にビルがある。せせこましい空間を横切り左の端にあるエスカレーターで道路に降りた。エスカレータも狭く、一人幅しかなかった。　■三鷹駅前　降りてまっすぐがメイン通りであることは、すぐにわかった。左脇の小道に居酒屋があった。たぶんこの左地区に居酒屋・スナックなどがあるだろうと思い、小道を入った。地図では細い緑矢印で示した方向である。二つ脇道を横切ると１００ｍで突き当たった。それを右折して１７０ｍ行くと本町通りに出た。想像した通り、この一郭には居酒屋・スナックがあった。地図では黄枠で囲んだ地域である。とくにピンク枠で囲んだ地域にはスナックがいくつかあった。（『プロアトラスＷ２』を加工）　歓楽街としてはこぢんまりした規模である。文化都市なのかもしれない。ほかに歓楽街がないか確かめるために、駅前に戻って中央通りを歩き出した。三鷹に縁のある作家を紹介した碑がいくつか建っていた。東急ストアを過ぎ、５００ｍ行くと丸正の建物がある。そこから先は賑やかさが半減していた。駅前まで戻って、右地区の方に行ってみた。ネオシティのすぐ裏手に居酒屋が並んでいた。小さい黄枠で示した地区である。調布に向かう自動車道路沿いを除き、あとは住宅街といってよいだろう。 ----------------------------------------- 　江戸から明治にかけて三鷹は純農村であった。明治２２年に甲武鉄道が新宿から八王子まで開通した。周辺の駅は武蔵境、荻窪、吉祥寺の順でできていったが、三鷹駅が設置されたのは昭和５年である。当初は南口しかなかった。北口が開設されたのは昭和１６年である。　三鷹駅の位置は市の北はずれで、武蔵野市との境をなす玉川上水に接している。南口には下連雀・上連雀があり、駅開設時には多少の人口があった。戦後になり、乗降客は飛躍的に増加していった。それにともない駅前通りの拡充整備がなされ、昭和４０年には完成し中央通りと命名された。その後、駅前広場の改修も行われた。（『三鷹市史』昭和４５年　参照）　三鷹は何の変哲もない街である。たぶん、三鷹駅が開設されたのがかなり遅かったからであろう。隣駅の吉祥寺は明治３２年開設で、約３０年遅れた。東京の西が郊外化されていった時期に駅が開設され、乗降客が急増した。東京郊外の街という性格で発展してきたので、それに必要な機能を備えただけの変哲のない街になった。それが今日、文化都市のイメージにつながっているのかもしれない。ちなみに、日経新聞（2005年8月12日朝刊・東京欄）に、文士の足跡として三鷹が紹介されていた。　規模は小さいが、人の主たる流れの左方向に歓楽街ができているのは、変哲のない街であるだけに、私の考えに沿っていてうれしい。　■日経新聞『文士の足跡　三鷹に息づく』