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企業のSP(ソーシャルパフォーマンス)と
FP(ファイナンシャルパフォーマンス)についての考察
口村直也
1. 企業の社会的責任の本質的意義と社会からの要請
(1) 企業の社会的責任の本質的意義
(2) 現代企業に対する社会からの要請
2. SP(ソーシャルパフォーマンス)
(1) SPの定義と指標
(2) SPを高めるマネジメントシステム
3. SP(ソーシャルパフォーマンス)とFP(フィナンシャルパフォーマンス)の関係
(1) SPとFPの関係に関する先行研究
(2) 米国における先行研究から得られる知見
4. 日本におけるSPとFPの相関関係に関する実証的分析
(1) SPとFPの実証的分析
(2) 環境経営格付結果とそのポイント化
(3) 分析結果と知見
5. 最後に
CSR(企業の社会的責任)の実践に対する社会的要請が再び高まっている。持続可能で生活の豊かさを実感できる社会を構築するためには、これらの取り組みを一過性のものとせず定着させる事が重要である。その為にはCSRに取組む意義、手法およびインセンティブを論理的かつ実証的に解明する努力を続ける事が必要となる。本論では、米国を中心に1970年代より約100件に及ぶ研究が続けられているSP(Social Performance)とFP(Financial Performance)の回帰分析による相関関係のレビューを行い、現在の日本における同分析を実施し大勢観察を行う。
企業経営には社会や環境と共生しつつ革新を続けることが求められており、ここでは企業の行動が正当であるとして社会に受容される上で何が重要であるのかが問題となる。CSR(企業の社会的責任)が急激な広がりをみせているが、企業が様々なステークホルダーの要請や期待に応えることを自発的に自己の責任として捉え、これを実践することは古くから確認されており、企業が社会的責任を果たすと言うことは本質的な意義を持つものと考えられる。またCSRの実践においては、複雑多様な内容を、何を基準にして、どのように選択し、どのような態度で実践してゆくべきかが課題と言える。こうした課題の解決に資する取り組みを知り、さらに発展させて行くことも重要である。一方、企業経営者を中心に「CSRは収益性に影響を与えるのか」について関心が持たれており、これらの課題に対し、何らかの実証的示唆を提示することも求められている。
このため、本論では以下のような展開でこれらの課題に答えてゆくこととしたい。まず、1章では企業がCSRに取組む本質的意義および現代社会における各種ステークホルダーが要請する企業の社会的責任について論じる。つぎに2章では、企業の「CSR遂行度」を把握するための業績指標であるSP(Social Performance)および、SPを高めるマネジメントシステムについて論じる。3章では2章で論じたSPとFP(Financial Performance)の相関に関する回帰分析の先行研究のレビューを行う事で、収益性対社会性という命題について現在までに展開されている議論について論じる。4章では3章での先行研究の成果を踏まえつつ、現在の日本におけるSPとFPの相関に関する実証的な回帰分析を行い、考察を行う。さいごに5章では1章から4章で得られた知見に基づき、CSRへの取り組みを定着、発展させるための課題や今後の研究課題について論じる。
3章の米国の先行研究より得られる知見から、SPとFPの関係は正の相関関係にあると言えそうであるが、統計的な有為性や変数の関係性が不明確であることから、「見せかけの正の相関関係」にあるという事が言える。この関係を前提とし、時間的枠組みを本格的に採用したMcGire (1988)らによる研究での結論は、「高いFPが高いSPを生み、それがまた高いFPに繋がる」という好循環の発生である。またこうした先行研究において、混合型が存在することからも、時間的または環境変化に伴う動態的分析も今後実施されることが望まれる。
4章の日本の実証的分析結果から考察される事は、米国での多くの調査結果と同様、SP(Social Performance)とFPの相関関係は、明確に見いだすことはできない事が解った。ただ、統計的な有意性はないが、散布図の近似曲線の形状より、SPが高いほどFPも高くなる傾向が読みとれ、その正の関係が否定はされないまでも、積極的には成立していない状態であると言える。また、当分析では産業分類に基づく大雑把なグループ分けによる定数項調整を検討し、そのグループ分けによる分析を行った。その結果からも明確な傾向はを見出す事が出来なかったが、第1・2次産業と第3次産業との間では有意性に関し大きな差異があることが解った。さらに、総合的SP指標を用いて分析を行う場合、分野別の分析を実施すると明らかに分野別の傾向が確認されることが解った。強い有意性、相関ではないが、社会分野におけるSPとFPの関係は正である可能性が高い事が判明した。
今後のさらなるSP・FP両分野での経年変化を確認できる基礎データの拡充により、中長期的な時間の概念も導入した複合型の相関関係を含む詳細な分析を行うことでその関係性を把握する事が今後の課題と言える。またこれらの研究に基づいた新たなCSRマネジメント手法の開発なども可能性となってくるであろう。
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日本における排出量取引制度と環境税
−その有効性と課題について−
竹内春美
1. はじめに
2. 温暖化対策に関する環境政策
(1) 地球温暖化対策推進大綱の見直し
(2) 温室効果ガスの現状
3. 京都メカニズムと排出量取引制度
(1) 京都メカニズムの概要
(2) 排出量取引主体と取引方式
(3) 英国における気候変動プログラム
4. 日本の排出量取引構想
(1) 国内排出量取引
(2) 排出枠の設定と配分方法
(3) レジストリ
(4) モニタリングと実質排出量
5. 国内環境税
(1) 租税としての環境税
(2) 政策としての環境税
(3) 環境税をめぐる最近の状況
(4) 西友のECO TAX
6. 地球温暖化対策の課題
(1) 「共通だが差異ある参加」への提案
(2) 温室効果ガス情報の共有化
(3) 国際排出量取引の有効性
7. おわりに
ロシアが京都議定書を批准し正式に国連に報告したことによって、2005年2月16日には京都議定書が「発効」される。政府においては地球温暖化対策として排出量取引や環境税の導入が検討されているものの、具体的な対応策の決定までにはまだ至っていない。環境対策の中でも市場メカニズムを使って最小のコストで目標を達成する最も効率的な対策といわれている排出量取引制度や環境税はメリットと同時にデメリットももつ。それぞれの特徴を明らかにしながら、我が国の環境政策のあり方を考察する。
2002年3月に改正された「地球温暖化対策推進大綱」について、その見直しが行われており、温室効果ガスの排出削減達成には、追加的施策を行わなければならない状況に陥っていることが明らかにされた。
環境政策には、直接規制・自主取組みや補助金や税制優遇措置のような既存の施策のほかに経済的手法として排出量取引や環境税などがある。英国では「気候変動プログラム」を発表し、2001年4月には気候変動税が導入され、2002年4月排出量取引制度導入された。
環境省では2003年に排出量取引シミュレーションを行っており、導入された場合の排出量の算定・検証方法、クレジットの取引・移転に係る手法、適切な目標設定の手法について知見を蓄積することを目的とした。排出量取引の導入にあたり、排出枠の配分方法、各事業者別の排出枠保有状況を管理するレジストリの整備、税務や会計上の取扱いなど様々な問題を抱えている。
財源調達手段としての環境税は、目的が財源の捻出にあり、そのために環境汚染者に対して排出量に応じて必要額を負担させるものである。一方インセンティブ型の第一目的は税収を得ることではなく、環境負荷物質の排出を抑制させるインセンティブを排出者に与えることが目的の税である。このような環境税の目的と税収の使途との組み合わせによりその制度設計は異なる。2004年11月5日の環境省発表では、課税対象は化石燃料と電気で課税段階は上流と下流に課税し、税率は2,400円/CO2-tとするハイブリッド課税の具体案が提示されている。しかし経済産業省は環境税を導入しても価格弾力性が小さいためCO2排出削減には効果がないと反対し、省エネ法を強化することと新エネルギー等への代替を促進させることを主張しているが、一般消費者にこれらの製品を購入させることの直接的なインセンティブとはならない。環境税は環境負荷の少ない省エネ製品へ移行させる促進効果があり、省エネ法や新エネ支援だけで対応しきれない部分を補完する。
企業に対する施策として、国内排出量取引により排出枠の削減目標を達成し、目標達成の場合は補助金を受け取る方法、国と自主協定を結び排出削減目標を達成できれば環境税は軽減税率によることができる方法などである。個人へのインセンティブとしては、省エネ製品や化石燃料と電気のCO2排出(予定)量に応じた一定率の金額を、環境税の税収を財源にして申告により還付する制度を導入する。環境税の税収をこの還付金額にあてることによって環境税の税率が低い場合でもCO2排出量削減に効率的に働くのではないだろうか。省エネ製品や化石燃料・電気に対しCO2排出量のインボイスを発行することとし、このインボイスを申告書に添付することによって証明する。このように環境税は、導入のスキームとともに税収の使途に関する具体的なシステムを同時に構築し、中長期的な展望をもって考えていかなければ、導入によるCO2削減の効果を計ることはできない。また排出量取引市場は多くの参加者があってこそ取引が活発になるため、中小企業や個人でも排出量取引に参加できるシステム作りが必要である。排出量取引を含め京都メカニズムが有効に機能するためには、この算定のための整備が不可欠である。
2004年12月にはブエノスアイレスでCOP10が開催され、議定書実施に向けた京都メカニズムの運用細則の合意がなされた。第2約束期間以降からは米国、中国などの主要排出国の参加なしでは地球温暖化の解決はできない。全世界が参加してそれぞれの「差異ある責任」を果たすべきであるし、国内においても国民が「共通だが差異ある参加」をして環境配慮型社会への転換を促進させていかなければならない。
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フリーターと環境経営
菅間智義
1. はじめに
2. フリーターの定義と傾向
(1) フリーターの定義
(2) フリーターの最新動向
(3) フリーターの増加ペース
3. フリーターの特性
(1) フリーターの生活
(2) フリーターの学歴・労働・収入
(3) フリーターの意識分類
(4) フリーターの生活・意識の特性から見た環境インパクト
4. フリーター生成要因
(1) 企業側の要因
(2) 学生と学校側の要因
(3) 社会的要因
5. フリーターと環境経営
(1) 環境経営について
(2) フリーターと社会
(3) フリーターの環境インパクト
(4) フリーターとの合力による環境経営を目指して
近年にわかに注目が集まるフリーター。しかし、フリーターとはどのような存在なのか、現状は役所ごとに異なる定義がなされている状態である。そんな状態であるにもかかわらず、世間は自らに都合のいい数字を用いて様々に議論をしている。このような現状において、まずフリーターに関する情報を整理して、その特性や生成原因を複眼的に追究する。さらに生成原因などをもとに、フリーターの存在と社会との関係を定義し、フリーターの存在そのものが持つインパクトを、環境経営や企業行動に反映する必要性や、その手段について考えてゆく。
まず1章では、錯綜するフリーター数の情報を整理する。著者は200万人フリーター説を支持する。そして、直近の正社員採用・非正社員採用者数や経営者の採用計画動向から、今後しばらくの間フリーターは増えてゆく可能性が強いと結論付ける。
2章においては、フリーターの生活様式や年収、なぜフリーターになったのかといった特性を諸資料を総合して考えている。フリーターには、進んでなる者、何となくなる者、仕方なくなる者がいるが、その比率は調査データによりばらつきがある。生活面では経済的な恩恵は少ないものの、親との同居などによる自衛策により、その満足度は意外と高いことがわかってくる。また、その生活様式は環境配慮型のものである可能性が高い。
3章では、何となく、仕方なくフリーターになる原因を、企業、学生・学校、社会の3つの視点からさぐる。フリーターの6割以上が高卒者で占められ、その就職口としてはかつて製造業が中心であった。しかし製造現場の海外移転に伴う国内労働力需要の減退、国際的競争上のコスト削減要請から、若者を安価でかつ仕事量に応じて調整が可能な形で雇用する必要がでてきた。さらに学校での教育内容と企業が求めるスキルの不一致や、就職活動にインターネットが導入されたことによる弊害が露呈しつつあり、その影響はかつての一流大学から有名企業就職という理想的路線に乗っている学生にすら、及んでる様子が明らかになった。さらに社会全体がバーチャル化した情報に大きく左右され、偏向した仮想現実を形成する可能性があり、その影響が若者や中高年のうつなどの原因となるほどのものである可能性が見えてきた。つまりフリーターは、これまでのうまく機能していた社会システムのほころびと、各個別のシステム間の矛盾、新情報媒体などの新たな社会のムーブメントの狭間で生みだされた存在であることがわかってきた。
そして最終4章では、フリーターと環境経営の関係を解き明かす。環境経営とは、新たな環境インパクトを早急に発見し事前に防ぐ。また、新技術や新制度の導入、市場の変化などを敏感に反映して、無理や無駄を抑え省資源、省エネルギー、適正投資、適正供給、低廃棄物を目指すものである。しかし、現在の企業経営は環境経営を標榜しつつも、それは環境と経営が分離した状態で行われている。つまり、過剰なまでの需要喚起、供給過剰、低価格競争、資源浪費、廃棄物の増大の一方で、世界中に木を植えれば環境経営としている感がある。そこで、過剰な需要を持たない、持てない、フリーター、省エネ型生活を送る、送ることを余儀なくされているフリーターから学ぶべき点も多い。一方で、将来の環境保全、社会維持を考えるとフリーターを志向する若者も、社会とまっとうに交わってゆく必要がある。
そもそもフリーターは、教育機関と企業との人材への需要と供給のズレに起因して生みだされている。教育機関(本論では大学)を中継点とした、企業と学生の交流による環境経営とフリーター抑制を提言として最後の掲げた。骨子としては、大学は企業のニーズにあった社会人養成プログラムを学生に提供する。そのプログラムは、夜間にも設定され社会人にも門戸を開く。企業人が入試や入学金なしに比較的に自由に出入りが可能な状態を実現する。大学はプログラムを随時見直す。交流ができた企業へは、大学をエージェントとして、準社会人としての学生が働く道を開く。賃金・労働条件については大学を交渉窓口にして、学生の利益を守る。賃金の一定金額を大学は受け取り、大半は学生に還元する。企業は、準社会人をインターンシップを越えた労働力としてみなす。卒業後準社員から正社員としての採用も可能とする。学生は、夜間の授業も柔軟に取得でき通常の卒業者と同じ扱いとする。
その結果、企業は講座による最新情報や大学関係者との人脈の獲得、準社員によるコスト削減と、次代の消費者(準社員)を理解した上での環境経営への応用。学生は、大学の庇護の下対等な立場で社会に触れ、自分の適性も確認でき就職にもつながる。また経済的困難者にも進学の道が開かれる。大学は、講座開講による収入と、エージェント収入、学生からの最新の企業情報、さらに就職率向上による入学志願者増が期待でき、経営の安定に寄与する仕組みが可能となる。
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企業価値向上のためのカーボンオフセット・マーケティング戦略
−植林による二酸化炭素の削減とコーポレートブランド価値との関係を探る−
江間直美
1. はじめに
2. 地球環境問題と京都議定書
(1) 京都議定書(京都メカニズム)の概要
(2) 排出量取引(クレジット獲得問題)
(3) 日本政府/日本企業の対応
3. 日本における植林活動の現状
(1) 持続可能な森林経営
(2) 日本企業の植林活動の現状
(3) 社会貢献としての植林活動
4. 地球環境問題とカーボンオフセット
(1) カーボンオフセット・マーケティング
(2) 事例研究:植林を通した二酸化炭素の吸収・相殺活動
5. 地球環境問題とコーポレートブランド論
(1) これまでのコーポレートブランド論/環境コーポレートブランド論
(2) 社会的責任投資(SRI)とコーポレートブランド価値
(3) ブランド戦略とブランド価値評価(見えざる資産評価)
6. 植林事業とコーポレートブランド価値との関係
(1) 一般生活者の企業評価のあり方
(2) 一般生活者の「企業の植林活動」に関する評価
(3) 仮説:企業の植林活動とコーポレートブランド価値との関係
7. おわりに
日本企業の事業活動に伴う二酸化炭素(CO2)の排出量は、ここ数年ほぼ並行状態を保っている。しかし、事業活動の拡大はCO2排出量の縮小を困難にする。そこで、排出した二酸化炭素(カーボン)を別の吸収源によって吸収することで相殺(オフセット)する考え方がある。京都議定書における京都メカニズムや森林吸収である。2005年1月にスタートした欧州連合のCO2排出権取引制度は、2005年2月に発効される京都議定書を待たずに実施される事業であり、今後、日本企業に影響を与えるものと思われる。事実、経済産業省や環境省も、国内排出権取引制度導入にむけた試行を重ねている。
日本企業は、こうした京都議定書における京都メカニズムの活用を経営戦略に組み込む準備を整備しつつあるが、一方で、社会貢献事業としての植林・育林(森林保全)活動も活発に行ってきている。しかし、こうした森林保全活動は、林野庁が実施した法人の森林制度参加企業アンケートの結果でも明らかなように、企業には社会貢献以上の期待感はない。欧米でもCO2の吸収・相殺(カーボンオフセット)を通じて、企業イメージの向上を図る活動が活発に行われているが、日本と事情は同様である。ただ、京都議定書の発効、CO2の吸収源としての森林価値が認識されるにしたがい、日本企業の社会貢献活動としての植林事業においても、木材資源、治水・涵養、レクリエーション機能といった森林の持つ多面的な機能に加え、カーボンオフセットの概念が着実に浸透してきている。企業の社会貢献事業としての植林活動が、京都議定書の発効によって、企業活動全体に大きな影響を及ぼす可能性がでてきた訳である。
現在、京都メカニズムのルールに伴う排出権取引市場で売買されるCO2の排出権について、国際会計基準では、無形固定資産として計上できるルールに変更されることが決まっており、将来的には、無形資産であったコーポレートブランド価値への影響は大きなものになると想定される。一方で、企業の社会貢献事業としての植林活動が、CO2の吸収源としての価値を認められることで、将来的には、京都議定書における森林吸収の枠組みに組み込むことが可能になると想定され、単なる社会貢献事業が本業を左右させる契機ともなりかねない。こうした状況を受け、各企業には、温室効果ガス排出の増減を数量から分かりやすい金額に置き換えて公表する動きがある一方で、社会貢献事業として実施した植林事業によって吸収されるCO2も、その貢献度を数値化する動きが出てきている。ただ、こうした情報開示によって投資家の信頼度が向上するといった声は今のところ少数派であり、試算根拠も各社で統一されているわけではない。そのため、各企業とも、サステナビティレポート(CSR報告書)などでは、財務への直接的な影響としてではなく、「環境への負荷軽減による推定的効果」などと表現している。
企業にとっては、一般的な社会貢献としての植林事業ではあるが、一般生活者のニーズにも呼応した活動であり、企業イメージや企業価値を向上させるための重要な要因となっており、植林活動は、CO2排出権の無形固定資産と同様、無形資産であったコーポレートブランド価値への影響は大きなものになると想定される。推定効果が金額換算され、実態として(可視化された)植林が実施されれば、機関投資家や一般生活者にとっては、企業評価を行いやすいものと思われる。課題は、投資対効果の測定である。
本研究では、企業の社会貢献活動としての植林事業によるCO2の削減とコーポレートブランド価値との関係を探っている。植林によるCO2の吸収・相殺という、カーボンオフセット・マーケティングを実施することで企業価値向上につながる可能性が見出せれば、各企業は、企業価値向上のために、植林活動を社会貢献としてではなく、本業として取り組むこととなり、市場メカニズムのなかで、企業自体の市場競争力を向上させ、企業価値を高めていくことができるのではないか、と考えている。
現時点では、企業ブランドに対する環境経営活動の貢献度を評価しにくいが、企業評価項目のなかで環境経営度が大きく影響してきているため、企業の社会貢献事業としての植林活動が企業評価に与える影響度を把握する意義は大きいといえる。現在、財務情報から企業戦略や企業価値、あるいはマーケティング戦略を評価する考え方が日本でも導入されつつある。その意味では、環境経営の分野においても、CO2の吸収・相殺量を使った企業の環境経営戦略に関する評価の考え方を提示することの意義は大きいと考えられる。本研究は、そのための仮説を提示するものである。
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