以上のように新しい国づくりに向けて状況の好転を旗印に行った数々のミッションも、東ティモールの社会の変容をもたらし、ソーシャル・キャピタルを浸食してしまい、開発効果全体を減少させてしまったといえる。社会の変容という視点から、Arun Agrawal (1997) “Community in Conservation,” paper prepared for the Ford Foundation and the Conservation and Development Forum, University of Florida, Gainesville による伝統的集団と近代的集団との対比で考えると、地位、カリスマ、宗教、第1次産業、未開発および現状維持というキーワードに代表される伝統的集団と、平等、信頼関係、科学、産業構造変化、開発、変革というキーワードに代表される近代的集団との間で、東ティモール社会は揺らいでいると捉えることができる。そもそも伝統的集団から近代的集団への移行は長い年月を要することである。これらの揺らぎの原因は東ティモールでは人々に内在しているものと外部からもたらされたものの2つの原因があるが、その変化は急速で伝統的な社会のいたるところで問題が発生している。